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今後の要約筆記事業を考えるワーキンググループ提言

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今後の要約筆記事業を考えるワーキンググループ提言


(一社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
(特非)全国要約筆記問題研究会

はじめに
1.要約筆記の特性
2.障害者差別解消法の施行に伴う要約筆記利用の変化と課題
3.提言

はじめに(提言に至る趣旨
a 要約筆記事業ワーキンググループ設置の経緯
聴覚障害者制度改革推進中央本部は、聴覚障害者団体とその支援者団体の6団体で構成されている。障害者自立支援法制定時から「聴覚障害者施策」なかでもコミュニケーション支援にかかわる課題に取り組み、その改善に向けた意見を発信してきた。
障害者総合支援法制定時の附則にある「意思疎通支援事業の見直し」に向け当事者団体として制度に関し、意志表示をしていくために、手話通訳事業ワーキンググループと要約筆記事業ワーキンググループが2014年度に設置された。 
聴覚障害者のコミュニケーション支援としての手話通訳事業、要約筆記事業は長い期間を経て、現在の制度までたどり着いた。聴覚障害者の意思疎通を仲介する手話通訳者や要約筆記者の養成や派遣に関するあり方もさまざまな形で検討が行われ、制度が構築されてきた。
2015年には障害者差別解消法が施行され、障害者雇用促進法も改正法に則って進められることになっている。こうした社会変化に対応すべく、要約筆記の特質を整理したうえで要約筆記事業の現状を俯瞰し、今後の展望について検討するために、一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会(以下、全難聴)と特定非営利活動法人全国要約筆記問題研究会(以下、全要研)による要約筆記事業ワーキンググループが設置された。

b 検討課題として挙げたもの
課題1「障害者差別解消法」などの実施に当たって、意思疎通支援に関する事項をどう盛り込むかの検討をする。
課題2 要約筆記や要約筆記事業に特有の課題もあるため、手話通訳事業と異なる部分を整理する。
課題3 障害者差別解消法、情報・コミュニケーション法(仮称)などで主要なテーマとなりうる「合理的配慮」「環境整備」部分での要約筆記事業を展望する。


1.要約筆記の特性
1.1 要約筆記という文字による通訳の機能
要約筆記は、手話でコミュニケーションをとりにくい主に難聴者、中途失聴者(以下難聴者等)の利用を中心に発展してきた。文字という共通の意思伝達手段を使い、第三者として通訳の機能を果たしている。直接会話する本人同士の筆談とは異なる機能であるが、一般には区別されていない。
聴覚障害者に自分の発言を伝えるには筆談すればよい、と考えるのは間違ってはいないが、その場面にほかの人の発言が入った場合、全員が筆談して伝えることは現実的ではない(場面によっては全員がパソコンを前にチャットすることでのコミュニケーションは可能ではあるが)。筆談での対応が必要であることと通訳として要約筆記が用意されることの必要性は別物という認識はまだ薄い。
難聴者等の情報獲得の状態は、そもそもの聴力レベルの違いだけでなく、体調、環境、音質、話される内容等により一定ではない。1対1の場でかなり聞き取れていると、要約筆記が必要であるとの求めも理解されにくい。
現状では、要約筆記は通常使用する文字を書く(入力する)ことから、技術を要するものと理解されにくく、だれにもできると思われている。しかしながら、その場の発言(原稿の読み上げ等ではなく生で話される話)が一字一句文字化されたとすれば、読んで意味の通る文にはならず、要約筆記者が通訳時に頭の中で行う情報処理により、意味の伝わる文として表出されている。
誰でもが読める日本語の文であることから、自分の聞き取ったワードやフレーズが要約文にないという非難を発言者から受けやすい宿命もあるが、要約筆記者は文字により発言者の意図を伝える通訳を行っている。

1.2 要約筆記の通訳作業
障害者自立支援法のコミュニケーション支援事業では、手話通訳や要約筆記は「意思疎通を仲介する」と記載されていた。意思疎通に関しては幅広い視点をとるため障害者総合支援法では、「意思疎通を支援する」との記載に改変された。意思疎通の場面で、意思を発信できない人も対象の支援が考えられている。しかし、手話通訳や要約筆記は、第三者として情報の発信者と受領者のあいだに介在する支援者であることを改めて押さえておく必要がある。
また、通訳作業をするにあたって、難聴者等の聞こえの状況や心理的課題を理解した対人援助の福祉的側面が大きいことも理解されにくい。要約筆記者に専門性が必要であることの認識は社会的認知には至っていない。
要約筆記を利用する難聴者等が、その場で適切な参加ができるためには、主催者や発言者との事前の打ち合わせや途中での調整も必要になる。大きな会場での要約筆記利用では、機材の設置位置と利用者の座席、表示の見やすさなどを勘案してより使いやすい要約筆記を提供していく条件整備も要約筆記者は担っている。こうしたことから、その場の音声情報を文字により通訳する要約筆記は「人と場面における意思疎通の支援である」といえる。
機械による文字表示の開発、発展が期待されているが、通訳場面での機能は限定的と考えるべきであろう。音声認識技術は会話の支援としては活用できるが、要約筆記は発信者と受信者の間に介在する通訳であり、そこでの意思疎通に仲介者としてかかわることから仲介の責任を持つ。


1.3 要約筆記事業(福祉サービス、合理的配慮、環境整備)の今後
障害者差別解消法や改正障害者雇用促進法の施行により、要約筆記の利用は拡大すると考えられる。現に都市部では、合理的配慮の提供としての要約筆記利用は年々増加している。合理的配慮としての要約筆記利用をとおして、難聴者等が自分にあった情報保障を知り、福祉サービスでの利用につながる事例も出ている。その意味で要約筆記利用は、両方向から拡充するものと思われる。こうしたなかで、要約筆記者の質の向上と量の拡大が求められる。
また、現状では要約筆記者は養成された自治体や派遣事業所の登録となっているが、報酬も含めた身分保障には大きな課題がある。要約筆記の場合、役所の窓口等での1対1の対応であれば、筆談も可能であり、そのための要約筆記者の設置は現実的ではない。企業等でも仕事に関する個別の指示等は筆談や文書での提示が可能であり、要約筆記する人をそのために雇用することは考えにくいとしても身分保障、待遇改善の問題は解決の方策が必要である。
一方で、配慮をする義務者の意思(過重な負担との兼ね合い等)により、要約筆記に代わるものが提供されることも起きる。筆談の提案や機器の活用の提案などがそれである。その状況に対し、その場の情報保障が難聴等の情報獲得の権利を十分に確保できているかの検証は行われにくく、人による支援が必要なケースが放置される状況が生じる懸念がある。
  
2.障害者差別解消法の施行に伴う要約筆記利用の変化と課題
2.1要約筆記事業における福祉サービスの現状とあるべき役割
①障害者総合支援法において実施されている意思疎通支援事業は、障害者福祉サービスとしての役割を明確にして、その内容の拡充を図るべきである。
平成25年3月27日発出の「地域生活支援事業における意思疎通支援を行う者の派遣等について(障企自発0327第1号)」に示された利用者範囲、利用目的、都道府県の責務の拡大等は現状では図られているとはいえない。
②障害者総合支援法において、意思疎通支援事業は地域生活支援事業として位置づけられている。財源としてはその半分に統合補助金が充てられ、残る半分を都道府県と市町村が負担している。この結果、地域生活支援事業の水準は地方自治体の財政状態に左右されることが多く、地域格差をもたらす大きな要因となっている。

2.2合理的配慮・環境整備としての要約筆記利用のあるべき役割
 障害者差別解消法の施行が始まると、要約筆記は合理的配慮・環境整備および福祉サービスとして、または私的な配慮(ボランティア)として利用されていく形が想定される。
障害者差別解消法において、合理的配慮の提供は行政機関等においては「義務」、事業者においては「努力義務」とされている。また、改正障害者雇用促進法においては、「障害者の自立や社会参加にとって極めて重要な分野であること、労働者と事業主とは雇用契約における継続的な関係にあるとともに、一般に労働者は事業主の指揮命令下にあること」から、事業主の合理的配慮の提供は法的義務とされている。(障害者雇用促進法第36 条の2及び第36 条の3)
 合理的配慮は障害者差別解消法の「基本方針」において、「障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。」とされ、合理的配慮の例として「筆談、読み上げ、手話などによるコミュニケーション、分かりやすい表現を使って説明をするなどの意思疎通の配慮」が挙げられている。
 このように合理的配慮としての意思疎通の手段は多様・柔軟とされているので、合理的配慮の提供者・利用者にとって容易に利用できる方法、あるいは提供者にとって負担の少ない方法が選択される事態が予想される。とくに文字を利用したコミュニケーションの場面では、誰もが利用できる筆談で用が足りるとする理解が広まる可能性が大きい。しかし筆談は「当事者同士の責任においてなされる」会話類似のコミュニケーションであり、その利用範囲は限定して考える必要がある。「人権としてのコミュニケーション」保障が求められる場面(例:労働・教育・医療・司法など)では、利用者が「話される内容を正しく理解する」情報保障が求められるのであり、コミュニケーション当事者を超えて内容の正しい伝達を担保する情報保障者(通訳者)の介在が求められる。前述の労働・教育・医療・司法などの場面では、提供者と利用者の間に大きな力関係の差があり、提供者によって提供しやすい意思疎通手段利用が強制されることが危惧される。

2.3福祉サービスと合理的配慮・環境整備との関係について
 要約筆記は、共通の意思疎通手段を持たない中途失聴・難聴者の集まりの場から生まれてきた情報保障手段である。自然発生的な筆談とは異なり、当初から集団による利用を想定し、その中で研究・工夫を重ねて現在の姿に至っている。運動的にみれば、中途失聴・難聴者集団化の「かすがい」の役割を果たしてきた経緯があり、当事者団体と自治体との折衝の中から当事者団体の集まりの場への要約筆記者の派遣が行政の福祉サービスとして実施されて今日に至っている。制度的には、社会福祉法の第二種社会福祉事業への位置づけ、障害者自立支援法のコミュニケーション支援事業への組み込み、障害者総合支援法での意思疎通支援事業と整備が進んできた。
 このような要約筆記であるが、障害者差別禁止法の施行によって、要約筆記の利用が福祉サービスを超えて、合理的配慮・環境整備として利用が進む流れが想定される。福祉サービスが原資を税金に求める公的サービスであるのに対して、合理的配慮・環境整備は原資を事業者に求める。この福祉サービスからの大きな転換に際して、要約筆記者の質的向上、派遣事業者の専門性の確保、セーフティネットとしての福祉サービスの充実などは焦眉の課題である。

2.4要約筆記と他の文字支援サービスとの関係について
(1)「字幕」と要約筆記の関係
 「字幕」(文字情報を含む)は、当事者間の情報保障(通訳)である要約筆記と異なるが、こうした整理がされていない。文字支援のサービスとしての新しい機器の開発と活用には責任の所在など多くの課題が残されている。
(2)「会話支援機器」と要約筆記の関係
 「会話支援機器」は情報発信者と情報受領者が直接的に情報のやり取りをしている限り、「筆談」類似の行為であり、「筆談」と同様な理解ができる。情報発信者の声が自動音声認識によって講演・会議の場に表示された場合、情報発信者と受領者が表示内容を「筆談」同様に相互確認することは不可能であり、表示内容の責任所在をどうするかなどの課題が考えられる。

3.提言
3.1「障害者総合支援法の意思疎通支援の見直しに際して」の提言
(1)意思疎通支援事業の利用対象者範囲
障害者総合支援法での意思疎通支援サービス利用者は障害者手帳を持っている聴覚障害者とされている。しかし、意思疎通(コミュニケーション)支援が必要な人は手帳を持っている障害者に限られない。手帳を持っていない聴覚障害者も、場合によっては健聴者も意思疎通支援が必要である。また、意思疎通支援を行う者の派遣については、個人利用にとどまらず、複数市町村の居住者が集まる会議などでの利用もある。障害者のニーズに適切に対応できるよう、意思疎通支援事業の利用者の範囲を、障害者手帳を持っていない聴覚障害者に広げると同時に、障害者団体(特に手話で直接のコミュニケーションがとりにくい難聴者団体)にもサービス利用を認める必要がある。
(2)利用目的の拡大
市町村においては民事調停やリクリエーション等への要約筆記者派遣を認めないところもある。コミュニケーションは人間の生活の全場面で必要とされるものであり、意思疎通支援の利用目的に対する制限は原則的に設けるべきではなく、犯罪に類するような社会的に許されない目的のみを排除していけば足りる。自治体によっては、自主規制のような制限を定めており、その根拠を問うと即改正されるようなあいまいな制限になっている。
公序良俗に反しない限り、聴覚障害者の「聞く」権利は保障されるべきとの議論がされてきた。それを具現化した「地域生活支援事業における意思疎通支援を行う者の派遣等について」の理解促進が現状ではなされていない。
(3)都道府県の意思疎通支援事業範囲の拡大
障害者総合支援法は都道府県の地域生活支援事業に「専門性の高い意思疎通支援を行う者を養成し、又は派遣する事業」を明記した。この結果、「市町村域を越える広域的な派遣、複数市町村の住民が参加する障害者団体等の会議、研修、講演又は講義等並びに市町村での対応が困難な派遣等」での手話通訳者又は要約筆記者が可能となった。しかしながら、都道府県によっては「広域性及び公益性を有する集まり」といった条件を付けて、派遣対象を制限している。特に公益性の要件は、障害者団体の組織運営に係わる会議への利用を制限するように運用されており、障害者権利条約が認めた障害者団体の積極的役割(第4条)を否定するような理解がなされている。都道府県の意思疎通支援事業は、域内の複数市町村からの参加者のある集まりへの意思疎通支援に加え、都道府県単位の障害者団体の活動に欠かせないサービスである。「専門性の高い意思疎通支援を行う者を派遣する事業」の規定は、「都道府県内の複数市町村の居住者が参加する、又は都道府県単位の活動をする障害者団体の行事、会議等へ意思疎通を支援する者を派遣する事業」を内容とするよう改正が必要である。
(4)全国レベルの集まりへの意思疎通支援
障害者の全国的な活動も活発になっている。現在、複数都道府県からの参加のある行事、集まりに対する意思疎通支援者の派遣の仕組みは整えられていない。一部では、このような行事・集まりの開催地自治体が意思疎通支援者の派遣を認めている例もあるが、全国的な了解事項とはなっていない。また、開催地自治体の派遣事業に依存する形は、開催頻度による費用負担偏在の課題を抱えることになる。全国的な行事・集まりへの意思疎通支援者の派遣は国事業として、実行を都道府県や市町村に委託する仕組みの検討が必要である。

(5) 全国一律のしくみの構築と財源確保
意思疎通支援のようにすべての障害者に共通に提供されるべきサービスは、地域の実情に左右される要素は少ない。従って地域の実情(特に財政事情)に合わせることは地域格差を拡大させるものと考える。現行の地域生活支援事業を見直し、意思疎通支援事業などは全国共通の仕組みとすることが適切である。
そのための77条、78条の改正により、地域生活支援事業の枠組みから外し、安定的な財源の確保が必要である。


3.2「合理的配慮・環境整備としての要約筆記利用の今後」についての提言
合理的配慮・環境整備としての要約筆記は、筆談とは異なり制度的保障・情報保障(通訳)の役割を担うものであって、多様・柔軟な意思疎通手段という漠然とした理解の中に、その持つ意味を埋没させてはならない。合理的配慮・環境整備としての要約筆記の定着のためには、制度的保障・情報保障(通訳)としての要約筆記理解の普及が喫緊の課題となる。事業者がこの理解を促進するための具体的な方策(難聴理解と文字情報の啓発講座の開催等)を進める必要がある。
さらに将来的な展望としては、すべての事業体がその経営理念に「共生投資」という概念を掲げ、すべての人が社会に共生するために「投資する」意識を育てることが必要である。これはCSRとして、ダイバーシティ推進等さまざまな形で行われているが、改めて「共生投資」という枠組みで、推進企業の公開や推奨等で促進を図ることも有益であろう。

3.3「福祉サービスと合理的配慮・環境整備との関係について」の提言
(1)情報保障(通訳)者としての要約筆記者の養成
 合理的配慮・環境整備として要約筆記者が利用される際には、現在の障害者総合支援法のもとに養成されている要約筆記者がこれに従事すべきである。これは、平成23年3月30日に通知された要約筆記者養成カリキュラムの内容にあるように、対人援助技術や障害者福祉の理念を学び、要約筆記者の社会的責任を認識したものが担うのが適切であるとの考え方からである。
第二種社会福祉事業に組み込まれた要約筆記事業における要約筆記者は、現在は養成自治体、またはその受託事業体の登録者に過ぎない。今後は資格化も視野に養成・研修課程を強化し、それに伴う待遇の改善、身分保障を整備し、社会的インフラと位置付けるにふさわしいものにすべきである。

(2)要約筆記者派遣事業者の整備
 福祉サービスを超えて合理的配慮・環境整備としての要約筆記者利用が広がると、派遣に係わる利害関係者が複雑な形に変化していく。特に依頼者(費用負担者)と利用者との利害は相反する場合もあり、派遣事業者(行政、社会福祉協議会、情報提供施設、当事者団体等)がその間に入って調整を行う場合も増えてくる。合理的配慮の提供においては、過重な負担を強いない旨の記述があるが、これは放置しておけば依頼者の判断が優先され、聴覚障害者の権利保障を薄れさせる。福祉サービスで優先される障害者の権利擁護に基づいた調整の視点が求められる。
要約筆記者同様、福祉サービスとして都道府県、市町村の委託事業としての要約筆記者派遣事業の事業者がその任を負うべきであろうが、公的事業の受託の現状を調査し、事業者としての業務専門性の向上、要約筆記を熟知したコーディネーターの設置などが急務である。
情報提供施設の設置も進んできているが、その運営は経営的な視点が薄いという指摘もされている。福祉分野での事業実施の良さを生かしつつ、運営基盤の強化を図れるよう国のバックアップが望まれる。それにより、地域の意思疎通支援事業の中核として、派遣事業を集約する方向を求めたい。

(3)セーフティネットとしての福祉サービス
 合理的配慮は基本方針において、「その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮を行う」とされており、多様かつ個別性が高いことが強調されている。そのため、当事者間の情報保障に関する理解の相違や費用負担を巡って、利用者が必要な情報保障手段を利用できないケースが生じる可能性が高い。そのような場合の利用者の権利を保障するためのセーフティネットとしての福祉サービスによる補充は、極めて重要な課題となる。

3.4「要約筆記と他の文字支援サービスとの関係について」の提言
(1)「字幕」と要約筆記の関係
 「字幕」(文字情報を含む)は、当事者間の情報保障(通訳)である要約筆記と異なることや、情報発信に関する責任の所在を明確にする議論が必要である。生字幕であれ、編集された字幕であれ、基本的に情報発信者が音声情報を文字にして表出するものであり、表出された内容は情報発信者が責任を持っていると理解される。この点、自動音声認識を使用した字幕(You Tubeなど)をどのように評価するかは議論となる。
情報発信者が全く関与していない字幕について、情報発信者の責任を問うことは困難だとしても、自動音声認識が利用されることを承知の上で、情報発信をそのような媒体を通じて行った場合は、発信側の責任なしとすることはできないであろう。(省庁の動画ニュースなどがYouTube を利用して発信され、それに字幕が自動的についた場合、省庁はそのような媒体に動画ニュースを流した責任があり、正しい対応は自動音声認識の利用ではない、省庁が責任を持った字幕をその動画ニュースに付けることと考える。)

(2)「会話支援機器」と要約筆記の関係
 講演・会議など複数の情報発信者と情報受領者による「会話支援機器」の利用は緒に就いたばかりであり、その評価も今後にされていくものであろう。多くの議論・研究が必要と思われる。
 その場の情報保障として「会話支援機器」が機能するか否かは情報の発信や受領との関係も含め未知数の現状であり、その場の意思疎通を仲介する要約筆記との関係も検討、整理されるべきであると考える。


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by toyonokuni | 2016-05-19 11:59 | 協会・センターからの情報 | Comments(0)


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