人工内耳に対する見解 

● 人工内耳に対する見解 ●
~人工内耳装用児とその保護者等への支援についての当面の方針~

 人工内耳は、日本において一定の存在を示す医療技術の一つです。これは従来の補聴器では十分な補聴が困難であった高度難聴に対しても聴覚を提供することができます。しかし、結局のところ補聴方法の一つであることに変わりはなく、人工内耳で得られる聴力は、補聴器など他の多くの聴覚補償機器と同じように、きこえる人と全く同じではありません。音声を「ことば」としてきき分けられるようになるためには継続的なリハビリテーションが求められます。また他の医療技術と同様、未だ多くの技術的限界を有しています。

 私たちは、人工内耳を装用することを否定はしません。また、人工内耳を装用しているからといって、聴覚障害者である事実に変わりがないので、人工内耳装用児・者に対して聴覚障害者を対象とする福祉制度の利用や情報保障が制限されることのないよう主張します。きこえない・きこえにくい各個人の必要に応じた適切な社会的支援が提供されるべきです。

 私たちは、人工内耳装用の有無にかかわらず、きこえない・きこえにくい子どもたちが、それぞれの障害の状態に応じた適切な教育的支援を受けられるべきであると主張します。きこえない・きこえにくい子どもたちが、きこえる人たちと対等に社会の各分野で活躍していくためには、適切なことばの力の発達が必要です。学校教育において「音声言語と手話言語の二つのことば」を通じて、日本語の読み書きの力を獲得することが必要です。日本で生まれた子どもたちが「日本語ということば」を獲得できる環境があり、学べる学校が保障されていることと同じ意味で、きこえない・きこえにくい子どもたちには、「手話ということば」を獲得できる環境・学べる学校が保障される権利があります。手話は、すべてのきこえない・きこえにくい子どもたちにとって生きていく上での拠り所でありセーフティネットとなる言語です。

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 また、ろう者とは、補聴手段に関係なく、コミュニケーションを通じて手話言語の必要性を自覚し、アイデンティティを形成していく中で、自らを「ろうである人間」と自覚した者です従って、人工内耳装用者も、私たちと同じようにろうコミュニティの一員となることができます。
 人工内耳により聴覚を回復する可能性がある一方で、実際の効果には個人差が極めて大きいことや、音声言語のみならず手話言語を使用するコミュニティもあることをきちんと情報提供されるべきと考えます。

 なお、医療を受ける患者は、自らのための医療行為を選択し、決定する最終的な権利を有します。人工内耳が医療行為である以上、この補聴手段を選択するのは各個人の自由ですが、本質的には乳幼児その人が決定権を有することになります。しかし、乳幼児は自ら意思決定することができません。したがって現実的な対応として、保護者に対する支援と一体になった自己決定権を保障する必要があります。私たちは、きこえない・きこえにくい子どもたちの将来のため、適切かつ必要な情報を提供し支援を行う責任を感じています。

 以上の考え方に基づいて、私たちは、人工内耳に関わる医療従事者との対話を深めていく必要があると考えます。そして、「Nothing about us, without us.」(私たち抜きに私たちのことを決めないで) の原則に基づき、聴覚障害をもつ当事者団体として、医療・療育・教育・福祉・行政等と連携し、調査、研究、議論を幅広く行い、人工内耳を含む、きこえない・きこえにくい子どもたち、人々に対する支援体制の確立に向けて取り組んでいきます。

                  一般財団法人全日本ろうあ連盟


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by toyonokuni | 2018-06-13 03:07 | 協会・センターからの情報 | Comments(0)